おもしろいインターネット(旧:池袋で働く編集長のブログ)

「人生から逃げるのではなく、人生に立ち向かう本を」 Powered by. 編集集団WawW ! Publishing

出版業界を殺す「あるもの」の正体の話をしよう(副題:大リーガークラスの編集者が集うダイヤモン社のほんとの凄みの話をしよう!)

グッグッモーニン!
編集集団WawW ! Publishing代表の乙丸です。

過去の仕事は→ http://thnktnk.jp/achievements/
仕事のご用命は masuno.otoma■gmail.com(■を@にかえて下さい) へ。





■いま、ダイヤモンド社がすごい!

ダイヤモンド社の井上さんと和田さんが、(なんと!)東洋経済新報社の佐々木(元)編集長のインタビューにお応えになっています。

 



で、前からダイヤモンド社さんは、ビジネス書の版元としてすごかったのですが、

ダウンロード

『もしドラ』(kindle版)  (単行本)

が、電子版と書籍版あわせて270万部のベストセラーになった当たりから、もう誰にも止められないゾーンに突入されている出版社さんです。


■少し前のベストセラー

少し前だと・・・、

ダウンロード (1)

『伝え方が9割』(kindle版)  (単行本)

が、58万部を突破していたり・・・、


ダウンロード (3)

『雑談力が上がる話し方』(kindle版)  (単行本)

が、43万部を突破していたり・・・、


ダウンロード (2)

『統計学が最強の学問である』(kindle版)  (単行本)

が、30万部を突破していたり・・・、


■現在のベストセラー

ダウンロード (4)

『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』(kindle版)  (単行本)

が、31万部を突破していたり・・・、


ダウンロード (5)

『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』(kindle版)  (単行本)

が、27万部突破していたりと、その動きはもう誰にも止められない状態です(笑)


で、大リーガークラスのビジネス書の編集者が続々とダイヤモンド社に移籍してるという話はガチで、僕の知り合いの優秀な編集者さんたちが、続々とダイヤモンド社に移籍していきました。
(僕も編プロの経営をしてなかったら、ダイヤさんに転職することを目指して動いていると思います^^ 恐らく雇っていただけないですが・・・、目指すのは自由!キリッ!)


■ここでは、編集力の根源の話をしよう

それで確かに、ダイヤさんは営業力がすごい。

営業力って目に見えないので外部からはうかがい知れませんが、目に見える部分だと、「売れた本を売り伸ばす広告力」は、明らかにすごい。

具体的には、本が売れた際に、電車の窓横広告をお出しになるなどです(常時やられてるわけではないですが)。

で、このブログでは、僕は編集者なので、ダイヤさんのマーケティング力よりも、「編集力の根源」になっているある仕組みの話をしたいと思います。

僕は、ダイヤの編集者さんが、ここまで伸び伸びと、いかんなくその力を最大限にまでお出しになっている力の源になっているある仕組みがあると思っています。

それは・・・、

ダイヤの編集者さんには、「年間発行点数」という通常の出版社の編集者が課されているノルマがなく、評価が「年間実売売上」によってなされている。

という点です。(違ったらごめんなさい。ダイヤの編集さん、ご連絡下さい^^)


■「あるもの」が出版業界を殺している

これ、単純に言えば、「発行点数」というノルマがないため、ダイヤの編集者さんは、伸び伸びと「売れる企画」のみに集中できるということです。

これ、超重要です。

なぜなら、弊社が重版率8割を保ててるのも、「世に広めたい企画に延々と集中できる発行点数を保っているから」であり、何より僕は、

年間発行点数という名のノルマが、出版業界を殺している (#゜Д゜)ゴラア!

と考えているためです。


■出版不況に見えるある図の存在

どういうことか?

出版不況なんぞと言われて久しいわけですが、実は、次の図が全てを物語っているのです。

booksales
出処: http://www.1book.co.jp/005000.html >

このグラフからわかることは、新刊の刊行点数はうなぎのぼりに増えているのに、書籍の売り上げは順調に落ちているということです。

総売上が落ちてる(=市場がシュリンクしてる)のに、商品(新刊)の数を増やしたら、商品あたりの売り上げが落ちる(=本が売れなくなったとか言われる)のは当たり前ですよね。

実は、これが「出版不況」(と言われる)原因です。

(僕は、売り上げ自体が落ちてるのは、若者の活字離れなんかが原因ではなく、単に不況のせいと思ってるクチですが・・・。これ知り合いのエコノミストさんといつか検証したい話です。どなたか一緒にやって下さいませんか^^?)

まあ、出版業界の「委託販売制度」という特殊性から、出版社側に、点数を多く出してキャッシュ・フローを保つという特性から新刊発行点数が増えている側面もありますが・・・、
(「委託販売制度」とか「出版業界のキャッシュ・フローの問題」の話は、機会があればいつかしたいと思います)

さらに根深い問題として、編集者の評価が「年間発行点数」でもなされがち、という点にも大きな問題があると思います。

これ、端的に言えば、出版業界の編集者の評価制度が古臭い!何の効果測定もなされてない!見ろ!人がゴミのようだ!という話に集約されるわけです。

ダイヤさんは、「年間発行点数」ではなく、「年間総売り上げ」で編集者を評価する、という制度によって、この出版業界の泥沼戦線の外で戦えていらっしゃるわけですと思うのです。


■ほんとはダイヤさんの仕組みのほうが当たり前だと思います

でも、「発行点数」とかっていうよくわけのわからない評価基準よりも、「売り上げ」で従業員を評価するなんてことは、他業種ではあたりまえだと思うんですけどね・・・。

単に、本当に、出版業界のマネジメントが、「再販制度」とか「委託販売制度」に守られた結果、古臭いまま残されてしまっている、という問題なだけだと思いますが(守られてるっていうか、補助金と同じことで、ジワジワと自分の首を締めてるだと思いますが)。

(何でお前がそんなに上から偉そうに言うんだという話ですがw)ダイヤさんみたいになりたければ、出版社の経営者の方々は、この仕組を導入されるといいと思うのです。

そっちのが、出版業界の未来の為にも、読者さんのためにもいいと思うんですよねー。

「委託販売制度」とか「キャッシュ・フローの問題」の話に引きつけて言えば、先日倒産したある出版社の編集者さんは、月に6冊本を担当されていたそうです・・・。

(そんなんで、本に編集者の魂吹き込めるかいっ!!!!!)


■出版業界古臭杉

いやねー、まじ出版業界ってまじ古臭いと思うんですよ。

他業種から来た僕からすると、「新商品(=新刊)出すのに、宣伝ゼロって・・・、そんな業界どこにあるの?」「例えば、コカ・コーラ社が新商品出す時に宣伝ゼロとかってあると思う!?」「映画って、1800円ぐらいで本に似た値段だけど、映画一個に万千万~何億もの広告費、はなっからかけてまっせ?」・・・なんぞと、日々おもてるわけです。

刊行点数の話から離れますが、ベストセラーを連発されているサンマーク出版さんや、幻冬舎さん、そしてダイヤモンド社さんは、しっかり宣伝をされています。(サンマークさん、幻冬さんはより売れた商品を売り伸ばす戦略に特化されており、ダイヤさんはより幅広い商品の広告を丁寧にされている印象があります。)

もちろん他にも、しっかり広告を打っている出版社もそこそこあります。

「とか言いながら、君とこは編プロだから全然リスクとってないじゃん」というご批判あるかと思いますが、うちは、もしも広告を全然売っていただけない場合、利益を放棄して、その分を広告に回していただく、ということをよくやっています。(スタッフの皆さん、勝手にごめんなさいm(_ _)m)

で、実は、出版業界にも、かつては、本を「商品だ」と言い放ち、ベストセラーを丁寧に連発されている伝説の編集者がいました。

光文社の中興の祖であり、かんき出版を立ち上げた直後に亡くなられた神吉晴夫さんです。

神吉さんは、生前、企画の重要性と同じレベルで、広告の重要性の話をなさっていたそうです。

ちなみに、影響力のある方に、発売前にご献本するということや、電車に本の広告を出すというマーケティング手法を生み出されたのは、神吉晴夫さんです。

出版業界は、忘れられた文明かのように、神吉晴夫さんの知識が断絶されてしまっています。

上記『ゼロ』や『嫌われる勇気』を、外部の編集者として担当された、元光文社→星海社新書→コルクの柿内さんは、「僕は、神吉晴夫の正当な後継者だ!」と語り、僕に神吉さんの存在を教えてくれたのですが、僕は、「神吉さんの傍流の真似っ子だ!」あたりを地味に目指していきたいと思いますw

ぶっちゃけ、弊社の企画立案方法と、企画会議の方法は、完全に神吉方式に則って行っています。
(それでその実績かい!っていうツッコミはなしの方向で^^)


■も一個の出版業界の大問題

てか、何よりも問題なのは、出版業界の最もな問題は、売上に汲々としすぎ、「売上を上げることばかりに注力しすぎた」結果、読者さんのほうを一向に見ず、中身に魂を込めていないことのほうが、問題のようにも思います。

「売れる本がいい本だ」って、出版業界ではよく言われるんですが、それちゃいませんか?

「魂込めていい本(=心より広めたい本)を作り、そして、全力で売る(=全力で広める)」っていうのが、あたりまえでは?

本はぶっちゃけ、タイトルを含めたパッケージング&マーケティングだけでも、中身クソでも、一定程度までは大きく売れることがあるんで、どんな中身にするか?は実際、編集者の良心に委ねられています。

で、編集者って、匿名性がまかり通ってるから、「売らんかなの本」ばっかりが世に溢れちゃってるので、単純に言うと、編集者の名前も著者さんの横に併記するのを義務化すると、トンデモ本とか作れなくなるので、読者さんのためにも、業界のためにもいいんじゃないかなと思います。

書いてるうちに熱くなってきてしましましたが、弊社は、「現実から逃げるのではなく、現実に立ち向かうための本を!」をミッションに、日々、自転車操業を行っている編集プロダクションです(`・ω・´)キリッ


以上、何か文章がガンガン上から目線になっていくことが、現在の最も悩みになっている乙丸からでした^^

現場からは以上です!!